ART-Meter店長 冨田が石畳にたとえヒールが挟まっても、突然の豪雨に地図が破れても、信じた小路に迷っても、言葉が通じなくともジェラート片手にフィレンツェの街を闊歩しながら「見つけた」「聞いた」アート事情を体感レポートとしてお届けします。

マダム イラリアも言っていた通り、絵画を買ったらその絵を額縁屋さんにもっていくのがイタリアでの常。絵画に関わらず、写真はもとより表彰状やワインラベル等、フィレンツェの人にとって額屋さんは生活に密接したお店のひとつのようです。
そんな街角のある額縁屋さんをひとつ、ご紹介いたします。

ART-Meterイタリアのラウンジにほど近い場所にある額縁専門店CORNICI MASACCIO。店先のガラス越しには、アンティークのものやシンプルなものまで絵画とともにさり気なく置かれている店内。入り口を入ると、さまざまな色合いの額縁で埋め尽くされた壁にちょっと圧倒!
その凝縮されたような空間に「うぁ」と小さな声を上げながら、眺めていると「ボンジョルノ!」と元気のいい声が掛かりました。
振り向くと、小さいお店の中央スペースで女性がチャーミングな笑顔で微笑みかけてきました。
この女性こそ、この店の主アントネッラさんでした。

アントネッラさんは額縁作りをフィレンツェで36年のベテラン職人さん。しかも、彼女はフィレンツェで唯一(!)の女性職人。店内奥に構えた制作部屋を覗けば、大きな竿とドリル等の機材がずらり。小柄で華奢な女性にも関わらず、なんともタフでなんともパワフルで更に驚いてしまいます。
彼女のチャーミングな人柄から、お店にもよく現地のアーティストさんが遊びにくるそうです。
「何度か日本から留学してきたアーティストに額縁を作ってあげたけど、その後どうしているのかしら。」とちょっと心配そうに遠くを見ているところに、彼女の優しさを感じてしまいました。
ART-Meterイタリアで絵画を購入したらアントネッラさんを訪ねてみてはいかがでしょうか。きっと作風にあった額縁をカスタマイズしてくれますよ!

フィレンツェといえば、ウフィッツィ美術館にあるボッティチェッリ作「ビーナスの誕生」やレオナルド・ダ・ビンチ作「受胎告知」に代表されるようなルネッサンス時代のイメージがありますが、フィレンツェの街を歩けば今現在活躍している作家の作品を取り扱っているギャラリーを多数見かけます。
伝統的なものを受け継ぎながらもイマに繋がっている作品たちの息吹を現地のギャラリーで感じ取ることができます。さすが、数世紀に渡って世界中から多くの画家たちを受け入れている都市フィレンツェ。1点1点の絵画から放たれる底力は圧巻です。
ということで今回、フィレンツェに活動拠点を置いているART-Meter登録画家でかつ、会員制ワインクラブ&ギャラリーをフィレンツェで運営しているガブリエレさんと順子さんを訪ねてまいりました。

ウフィッツィ美術館とドォモの間という、絶好のロケーションに位置するガブリエレさんのギャラリーCHIOPPO DUEがあります。
昼間は絵画教室、夕方には「絵を見ながら、寛いでもらいたい」とのことで美味しいトスカーナワインがお手頃に飲めるスタンドバーに様変わりする1年半ほど前にオープンしたばかりの会員制ワインクラブ&ギャラリーです。
石畳の小路に面した1階にあるそのお店。
私が訪問したバータイムである18時30分を過ぎた時間には、フィレンツェ市が公認する路上活動画家の組合長という肩書きをもつガブリエレさんを慕って、あっという間に画家、彫刻家、キュレーターなど現地のアーティスト関連の方々が集まり、賑わいをみせておりました。
事実、私が訪問した19時頃にはグラスを片手にアーティストの方々は路上で談笑していたのでお店の場所がすぐにわかりました(笑)。

大きなワイン貯蔵庫に入るような感覚で入り口をくぐれば、ガブリエレさんと順子さん、そしてその息子さんが素敵な笑顔で迎えてくれます。店内は眩しいほど真っ白な壁、そして一番奥にすえたカウンターに並ぶトスカーナワインが目の中に飛び込んできます。
聞いたところ、その真っ白な壁はガブリエレさんと順子さんの二人で塗ったとか!この居心地の良さは、細部に渡ってお二人で作ったぬくもり溢れる空間だからなのですね。

その真っ白な壁には作品展示が行われており、訪問時には画家でもいらっしゃる順子さんによる柔らかな水彩がギャラリーに彩りを添えていらっしゃいました。
「他のギャラリーでも同じだけど、画家の展示会がある初日には盛大にレセプションパーティをやるのよ。」と、ギャラリーを運営する順子さん。CHIOPPO DUEでも、評判がいいのは日本人の順子さんが作る寿司パーティだとか。
ピザの斜塔で有名なガリレオ・ガリレイが幽閉されていた(!)フィレンツェ郊外アルチェトリの山荘にほど近い場所にあるガブリエレさんの自宅の庭先で育てた空豆をほおばりながら、美味しくお手ごろ価格のトスカーナワインにしばし舌鼓。ちょっとご機嫌になりつつ、幅広い国籍の画家さんたちと乾杯。
イタリアンワインだけではなく、目利き(舌利き!?)のガブリエレさんと順子さんがセレクトしたフランスワインも堪能できるこちらのバー。夏場は爽やかなシチリアの白ワインと庭先で採れたて新鮮な夏野菜が大人気だとか。うらやましい限りです。
花の都フィレンツェにて貸しギャラリーで作品の展示会をしたり、日本語による絵画教室でトスカーナ地方の風景画を描いた後に、スタンディングバーでワインを片手に寛ぐという旅もいいかもしれないですね。

さておき、後ろ髪を引かれながら閉店である20時にお店を発ち、薄ら雲で時折隠れる月に照らされながらほろ酔い加減で街を歩いていると、通り向こうから太鼓の音が石造りの建物にこだましています。音に引き寄せられていくと、人だかりが出来ています。
何かしら?バーでライブでもやっているのかしらと、ミーハー心がうずきます。
これは、行くしかない!
より一層激しくなる太鼓音にかき消されぬように声を張ってワイングラスを片手に路上まで溢れている人達を捕まえて、今は何をやっているの?と尋ねてみます。
なんとそこはギャラリー!ちょうどある画家のオープニングレセプション中だとか。もちろん、誰でも参加を歓迎するよ!と陽気に笑いかけてきたイタリアン。気がつけば、右手にワインが差し出され、すかさず乾杯。ギャラリーの空間とワインに酔いながら、深まっていくトスカーナの夜。
アートもそれを発表する場も堅苦しくなく、皆で楽しい空間にしてしまう場所があるって言うことが、アートを身近なものにしていくことなのですね。