Interview

ずっと心に残っていた絵画|連鎖する優しい作品の制作

散歩や旅をしているなかで印象に残ったシーンを描くことが多いというliaさん。描かれる花や夕陽から、励ましの言葉が聞こえてくるようです。どのような経験や想いから現在に至るのか。liaさんにお話を伺いました。

デザインから絵画、デジタルからアナログへ

ー絵を描き始めたきっかけを教えてください。
気付いたらもう絵を描いていたので、何がきっかけだったのかは覚えていないんです。小さい頃から絵を描くことが大好きで、ドラゴンボールやドラえもんなど、本能のまま自由に描いていました。得意だとか、そう意識することは特になかったのですが、小学校の写生大会などで、金賞や銀賞をもらえたときは、上手に描けているのかなと思って嬉しかったですね。

ー美術部に入ったり、絵を習ったりはされていましたか?
高校3年生になって初めて、美大を目指す予備校に半年通いました。部活は吹奏楽部でクラリネットを吹いていたのですが、進路を決めるタイミングで自分が本当にやりたいことを考えた時、デザイン関係の仕事ができたらいいなと思ったんですよね。絵を描くことも好きでしたし、その道を目指すなら美大に行きたいと思い立って。母子家庭だったので大変でしたが、武蔵野美術短期大学の生活デザイン科に入りました。

※武蔵野美術短期大学:2003年に廃止され、教育施設などは武蔵野美術大学造形学部に引き継がれた。 

生活デザイン科という名前ではありますが、幅広く様々なジャンルを学べる学科で、例えば雑誌の紙面レイアウトや、写真の基本、パッケージデザインの基礎などを勉強しました。画家として生活していくことはハードルが高いイメージがありましたし、日常に馴染みのあるものの勉強をしておいた方が就職しやすいと思って。ロゴデザインをすることなども好きでした。

ー小学校時代はドラゴンボールなどの漫画やアニメ、現在は風景や静物、その間の当時はどのような絵を描かれていたのでしょうか?
実は水彩を始めたのは2年ほど前からで、それまではずっとパソコンで、主にキャラクターというか人物を描いていたんです。身近な人の似顔絵などを、デフォルメしたり思いっきり漫画っぽくしたりして、描いていました。

デザイナーとして働いていた時も、帰宅したらMacでゲームやアニメのキャラクターを、絵の練習をするような感覚で描いてましたね。ECサイト上に人物画は1枚も発表していないので、そのイメージはないと思うんですけど。

ー現在は水彩と同時に、デジタル絵画も描かれるんですね。
はい。アナログかデジタル、どちらの方が好きとか得意とか、そういうことはなく、全てが自分の一部ですね。時間が許せば、本当はもっといろんなジャンルの絵を描きたいと思っています。オリジナルのキャラクターとかも作っていきたいですね。

絵画を見ることで励まされた経験から生まれる、自身が描く絵画への思い

ーデジタルでの人物画を描かれるなかで、アナログでの静物や風景画の制作を始めた理由は何かあるのでしょうか?
もともとアナログで絵を描くことにすごく興味があったんですが、その時たまたまYouTubeでいろんな方の水彩画やアクリル画を見る機会がありまして、それで実際にやってみようと思って描き始めました。

風景やお花を描くのは、以前、入院していた病室に風景や綺麗なお花の絵が飾ってあって、それに励まされたからなんです。その絵を見ながら、元気になってここに行きたいな、と思っていて。その経験から、自分もそういう、誰かの励みになるような絵を描けたらいいなと思ったんです。

その入院、手術はもう5年以上も前のことですが、ずっと心に残っていて。もし水彩画を描くのであれば、落ち込んでるときに見て励まされるような、落ち込んでいなくてもそれを見てクスッと笑っちゃうような絵を描きたいと思っていたんです。最近発表した魚の絵がそれですね。

作品名:ぷかぷか

ーアクリル・ソフトパステル・オイルパステル等を使用されますが、画材を使い分けられる理由は何かあるんですか?
どういう絵を描きたいのかで画材を選んでいます。例えば、滲みをメインにふわっと優しく描き上げたいときは水彩、鮮やかに色を塗り重ねて重厚感を出したいときはアクリルを使ったりしています。

ー絵画に関してマイルールやこだわりはありますか?
あまり考えたことがないですが、本当に描きたいものを描くのが一番だと思っています。そこは、デジタルでもアナログでも同じですね。先ほどお話しした励まされる絵を描く、ということも共通する部分です。

ー想像で描くときもあるとのことですが、それは例えばどんな絵なのでしょうか?
たまに練習で夕陽などの風景を描くのですが、旅行に行ったときに見たものを思い浮かべて、それを描くことが多いです。

想像で描く方が難しいんですけどね。写真を見ながら、そのまま描く方が描きやすいです。想像だと光の加減や角度など、絵の中に矛盾が出るかもしれないですし。でも、この色がいいな、この色がいいな、と自由に塗っていくので、結局は矛盾が生じること自体はさほど気にせず、好きに描いているんですけどね(笑)。お花の絵も想像で描いたものもあります。

作品名:mysterious cloud

存在しないものを想像して描くのではなく、以前見たものを頭に置いて、そこに好きな色を加えていくようなイメージですね。

ーデジタルで静物や風景を描かれることはありますか?
はい、あります。

ーその後にアナログで描いてみた時、苦労などはありましたか?
色の違い、混色に関してですかね。デジタルですとカラーウィンドウ上をスライドさせるだけで好きな色を選べますが、現実ではそれができないですから。赤と青を混ぜてみたけど思っていた色ではないな、ということが多々あります。

ただデジタルにも困ったことがあって、見てる人のモニターによって色が違うんですよね。プリントしてみたら、モニターと色が違うこともありますし。そこは勉強していくしかないと思うんですけど、難しいなと思いますね。ECサイトに出すときも、その方のモニターではどのように見えているのかなと毎回ドキドキしています。

あとは、デジタルだとサイズの制限がほぼないので大きい絵が描けますが、アナログだとどうしても狭い部屋の中で描かないといけないし、発送もするので大体A4ぐらいまでなんですよね。もちろん、デジタルで大きな絵が描けてもプリントするときは大変ですし、先にもお話ししたようにイメージと違った、という苦労もあるのですが。

実際に絵の具に触れることで得られる感情

ー筆を使う感覚はどんなものでしたか?
やはりデジタルで描くのとは全く違う感動がありました。自分が働いて買った筆で描くことの嬉しさというか。上手か下手かなど関係なく、「絵の具を溶いて塗っている」ということ自体に喜びを感じましたね。

色にも癒されることがあるので、見ている人にもぜひ絵を描いてみてほしいと思うほどです。完成された絵を見ることでも心が豊かになると思いますが、制作しているその瞬間も癒されますし、楽しくて大切な時間なんですよね。

ー制作されるタイミングや、モチーフを決めるのはどんなときなのでしょうか?
例えば、仕事が終わって外に出て、すごく疲れているときに、夕陽とかを見ると励まされることがあるんですよね。そういう時に「これを描こう」と思います。忘れずにメモしたり、写真に撮ったりしておいて。でも写真の通りに描くのはつまらないので、少しアレンジを加えてみたりして。

気持ちの変化というのはそんなにないんですけど、朝から晴れている日には、「よし、今日は描くぞ!」と思いますね。太陽光が入っている部屋だと色がわかりやすいですし、朝から晴れていると、グジグジしていた気持ちもどこかへ行っちゃうので、「今だ!」と思って描きます。明るい気持ちのときに取り組む、それがほとんどですね。

ー外でスケッチもされるんですか?
この前デビューしたんですよ。外で描くことはすごく難易度が高いので、それを作品にするのは到底先になりそうですけどね。お散歩中のおじいちゃんとかおばあちゃんとか、周りにギャラリーがいますから(笑)、それだけで緊張します。寒かったり暑かったりするとそれも気になりますし、集中しづらいかもしれないですね。陽の光はどんどんどんどん変わっていくので、もちろんそれに伴って影も変わっていきますから、構図を決めることも難しくて。でも自分自身のレベルアップに繋がると思うので、外でのスケッチにはまた行ってみたいです。

作品名:白鳥の楽園

ー影響を受けているアーティストはいらっしゃいますか?
小さいときは鳥山明先生が大好きでした。それからアルフォンス・ミュシャの平面的でおしゃれな感じがすごく好きですね。ただ、ミュシャに憧れてるからミュシャのような絵が描きたいというわけではなく、系統として好き、という感じです。

鳥山明さんに対する憧れもそれと同じで、スライムが大好きです。デザインがもう神がかっていて、もう本当に、とにかく大好きなんですよ。シンプルなのに可愛くて。あんなにシンプルなのに鳥山明先生の作品だとわかるのがすごいですよね。

ー漫画家になりたいとは思われなかったんですか?
そういえば思ったことないですね。その時その時で興味がある方向でやってみて、今に至っています。

ー今後やってみたいことや挑戦してみたいことがありましたら教えてください。
まずは画力をどんどん磨いていきたいですね。それから、キャラクターの絵はアナログで描いたことがないので、そういった絵も描いていきたいと思っています。

いつか個展もやってみたいとは思いますが、作品が溜まってないので、すぐにはできないですね。作品が溜まったらやりたいです。

ー楽しみにしています!最後に皆さんに伝えたいことがありましたらお願いいたします。
言葉にするのはすごく難しいのですが、つらいときも、元気なときも、絵を見ることで活力が湧いたり、癒されたり、励まされたり、絵の中の場所に行ってみたいな、と思ってもらえるとか、そのように感じていただけたら嬉しいなと思います。

<取材を終えて>
明るくユーモアたっぷりなお人柄のliaさん。自身が大変な時に励まされた経験がずっと心に残っていたと語る姿からは、彼女自身の優しさや、直接言葉にせずとも作品に対する感謝の気持ちがこちらへ流れ込んできました。

lia

lia

ルーツはもともと大好きだった「絵を描くこと」。そこから派生し、専門的に勉強されたデザインやデジタル画、自身が絵画に励まされた経験も含め、幅広くアートというものを体感されています。絵の中に描かれるその場所に行ってみたい、と思わせることはつまり、明日を生きる励ましを与えることとイコールでもある、そのような絵画を丁寧に制作されています。

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